マルクス経済学入門①商品と価値形態、そして貨幣のはじまり

基本的な用語である使用価値価値から解説しよう。使用価値とは、「使用してなにかしら得るものがある」という意味である。たとえばパンが使用価値を持つのは、人がそれを使用することで(食べることで)空腹を満たすからである。価値とは「それをつくるのにどれだけ手間がかかったか」という意味である。つまり、一つのパンをつくるのに費やされた労働の量によってきまるものである。

次に具体的有用労働抽象的人間労働について解説しよう。
具体的有用労働とは具体的に何かをつくるための労働である。たとえば空腹を満たすという使用価値をもつパンをつくるための労働などがそれにあたる。具体的有用労働によって使用価値が生まれる。抽象的人間労働とは、単に人の手を加えることをいう。抽象的人間労働によって価値が生み出される。

さて用語の解説をしたところで本題に入ろう。商品とはなんだろうか。言うまでもないことだが、商品は有用でなければならない。インクの出ないボールペンが商品にならないのと同じように。つまり使用価値を持たねばならない。次に、価値を持たねばならない(=人の手が加わらなければならない)。たとえば「空気」などは明らかに有用だが、人の手が加わっていない(=抽象的人間労働がなされていない)ので、価値をもたず商品にはなりえない。

そして商品が交換されるときの前提として価値法則というものがある。
価値法則とは①商品は需給が一致していれば価値通りに価格が決まり、価値通りに交換される。②商品の価値の大きさは、それを生産するのに必要な「社会的平均時間」に基づいた「抽象的人間労働」の量によって決まる。

咀嚼すれば、価値とは平均どれくらい手間がかかるかによって決定され、需給が一致すれば、等しい価値どおしで交換されるということである。しかしながら、いくら価値が等しいといってもいわゆる物々交換というものは困難であるし、不便である。たとえばAさんがパンをつくり、Bさんがつくった綿布と交換したいと思ったとしよう。たとえパンと綿布の価値が同じであろうと、BさんがAさんのパンをほしいと思わなければ(使用価値を見いだせなければ)物々交換は成立しない。そこで現れたのが、あらゆる商品の価値を統一的に表現する一般的等価物である。つまり貨幣である。余談だが、単なる交換の媒介でしかない貨幣を絶対的な存在として崇めることを、貨幣の物神的性格を呼ぶ。

まとめると貨幣とは①価値尺度である。つまり抽象的人間労働の量をはかる。②商品流通の手助けをする。この2つの働きをしている。
このように貨幣とは非常に便利なものだが、最後に貨幣の必要量について言及しようと思う。言うまでもないことだが貨幣は循環しているので、必要な貨幣量とは、商品の量とその貨幣が何回繰り返して使われるかによって変わる。
すなわち

必要貨幣量=商品の価格の総計÷貨幣の流通回数

である。