競争戦略論入門③マーケットシグナル

マーケットシグナルとは、企業の意図、動機、目標、もしくは社内状況を直接、間接に示す行動のことをいう。競争業者はさまざまなやり方でシグナルを出している。そしてマーケットシグナルをキャッチし、正確に読み取ることは競争戦略の策定に非常に重要になってくる。以下に示すのが重要なシグナルである。

動きの予告
すなわちある種の行動を起こす、あるいは起こさないといった意図の発表である。予告の機能は7つある。
①同業者に先んじて有利な地位を占める
②競争業者が計画している行動の実施を妨げる脅威
③競争業者の気持ちを推し量るテスト
④競争業者の動きに対する歓迎あるいは不快感を伝える
⑤競争業者に対する懐柔策
⑥金のかかる動きを同業者がいっせいに採用するのを防ぐ
⑦株価をあげたり、企業の評判をよくする

事後の発表

業界事情についての競争業者のコメント
これらのコメントは、業界について競争業者が抱いている仮説をあきらかにする。そして当然、コメントをする業者は自社が有利になるようなやり方で、業界事情を解釈する。

自社の動きについてのコメントと説明
以下に示す3つの機能を持つ
鄯)その動きの必然性を他社に納得させ、その動きに追従させるか、あるいはその動きを挑発と受け取らせないようにする。
鄱)先取りの意思表示
鄴)他社の進出意欲を削ぐ

競争業者の現在の戦術と実行可能だったのに採用しなかった戦術との比較
競争空相手が他社に損害を与えるという点で最小の効果しかあげない弱気な戦略を選んだとしたら、それはこちらにとって攻撃をかけていいというシグナルになる。実際上は選択できたのにそれをとらずに弱気な戦略をとったということは他社を懐柔する意図を示すシグナルである。逆もまた然りである。

新しい戦略の導入法
導入法のちがいによって、企業が非難を覚悟で戦略の導入に踏み切ったのか、業界全体の利益を考えたのかを区別する手掛かりになる。

過去の目標とのずれ
どんな戦略要素においてもこれまでの目標との間にこのようなずれが生じた場合は、そのずれに着目してすみやかにシグナルの意味をさぐらなけらばならない。

業界で前例のない行動
基本的にこれは攻撃のシグナルである。

間接的な反撃
不快のシグナルを示し、進出してきた企業にあとから重大な反撃を加えるという意思表示をする。

攻撃用のブランド
競争相手の脅威にさらされている企業は、その企業をこらしめる効果を持つブランドを導入することがある。攻撃用ブランドは競争業者に対する警告、抑止、もしくはその攻撃の矛先を吸収するための攻撃専用部隊といえる。