競争戦略論入門④競争業者分析

競争戦略策定の主眼は、綿密な競争業者分析にある。競争業者分析の目的は、競争相手の今後の戦略変更の内容とその成功の可能性を探り、ほかの同業者が新たに採用する有効な戦略上の動きに対する各業者の反応を予測し、さらに将来発生すると思われる業界内での変化や、業界を超えた幅広い環境面での変化に対する各競争業者の対応を知ることである。そして、つぎのような質問に答えられなければならない。
この業界ではどの企業を競争相手にするべきか、その企業のどんな動きを競争の対象にするべきか
その競争業者の戦略的な動きは自社にどんな影響を及ぼすか、その動きをどれくらい重視する必要があるのか
競争を避けた方が望ましい分野はどこか

そして競争業者分析は以下の4つの診断的要素からなっている。
競争業者の①将来の目標
     ②現在の戦略
     ③仮説
     ④能力

①将来の目標
目標を知ることができれば、競争業者が現在の地位や利益水準に満足しているかどうかが推測できる。そうなれば現在の戦略を変えてくる可能性がどのくらいあるか、あるいは企業環境の変化やほかの業者の動きにどの程度の反応を示すか、を予測することができる。また自社の戦略変更に対する競争業者の反応も予測できる。

②現在の戦略
業者別に現在の戦略を明らかにすることは、その事業のそれぞれの業務部門の実行方針を明らかにすることであるから非常に有益である。

③仮説
どんな企業も自社の立場について一連の仮説を持っており、それらの仮説に基づいて活動している。それは正確な場合もあるし、不正確な場合もある。あらゆる仮説を調べることで、経営者が自社環境を認識する場合に知らず知らずのうちに入り込んでくる偏見、もしくは盲点を見つけ出すことができる。具体的には以下の項目について考察するのがよい。
・その業者は、地位がどのくらいにあると考えているか
・特定の製品、戦略にどのくらい一体感を感じているか
・文化、国のちがいによって事象の認識の仕方とそれの重要度の決め方にちがいはあるか
・その企業に独自の慣習はあるか
・製品の将来の需要についてどのように考えているか
・その企業は他社の能力をどのように見積もっているか

④能力
具体的には以下の項目について考察すればよい
●核になる能力
・各業務部門の能力はどうか
・戦略の一貫性をどのようにテストしているか
・年月とともにその企業の能力は成長するか

●対応能力
・資金の借り入れ余力はあるか
・自由に使える準備金はあるか
・工場のキャパシティに余裕があるか
・未発売の新製品の在庫があるか

●持続力
・経営陣は団結しているか
・株式市場からの圧力はあるか
・長期的な展望に基づく利益目標はあるか